「中学受験を考えていたけど、子供にやる気がないので高校受験させればよいかな?」または「うちの子は中学受験と高校受験どちらにむいているんだろう?」とお悩みの保護者の方へ。中学受験・高校受験・大学受験を全部経験した東大卒講師歴20年の図解講師「そうちゃ」が考え方を示します。記事を読んでお子様のタイプと照らし合わせれば、考えがまとまって、とりあえずの方向性が決められます。
前編・後編の二回に分けてお届けします。
中学受験と高校受験の違い
参考サイト:「中学受験高校受験パスナビ」
科目・配点
私立中学受験の入試は、算数(100)/国語(100)/理科(50~75)/社会(50~75)です。一方高校受験は、公立の場合は、英語(100)/数学(100)/国語(100)/理科(100)/社会(100)、私立の場合は英語(100または若干高め)/数学(100)/国語(100)です。
注目してほしいのは暗記科目(理科・社会・英語)の比率です。天才でない頭脳の持ち主の受験生(私もそうでした)にとって、真面目に取り組めば点数になる暗記科目は「予め得点が計算できる」ので、志望校決定や受験計画に重要だからです。
公立高校の入試は中学受験に比べると暗記科目の比重が高くなり(40%→60%)、内容も教科書レベルのため「コツコツ型」の子にはチャンスが増えます。(ただ、この後書きますが、他にも色んな条件が加わってきます…)
私立高校の入試は逆に暗記科目の比重が低くなり(40%→35%)、暗記科目の英語のレベルが教科書よりも高いので「コツコツ型」の子のチャンスは減ります。
また近年増えている公立中高一貫校の「受検」は四科目が総合した試験で、内容的に単に知識を問うような設問は非常に少ないので暗記の比重は一番低いです。
秀才型向き←----→コツコツ型向き
公立中高一貫 私立高校 中学受験 公立高校
(思考型のみ) (難しめ三科) (算国理社) (易しめ五科)
私立に通わせたいなら「ひらめきがない」コツコツ型の子は中学受験の方が良いかもしれません。
合否の決定要素・期間
中学受験は入試当日の試験一発で決まるところがほとんどです。
一方、高校受験の場合は当日の試験に加えて「事前の成績」を加点または利用します。
「事前の成績」として使われるのは学校の通信簿の成績(評定)で、その範囲は一年生から三年生の二学期までという長期間に渡ります(県によっては中三で受験した摸試の成績を「事前の成績」として使うこともあります)。
また通信簿ですから勉強以外の活動も対象になり、教師の主観が加味されます。
つまり、中学受験が純粋に客観的な一発勝負であるのに対して高校受験は主観要素が交じる長期戦になります。
高校入試には「公立入試」と「私立入試」の二種類それぞれに「一般入試」と「推薦入試」があり、全部で四つの入試があるので、それぞれをザックリ眺めます。
「公立高校一般入試」は当日の試験+事前の評定で合否がきまりますが、評定が低いと願書の提出を中学校に許可してもらえないことがあります。
「公立高校推薦入試」は当日の試験のみで決まりますが評定が基準に達していないと願書を提出させてもらえません。
このように「公立一般入試」も「公立推薦入試」も事前の評定が第一関門になっているので、公立高校入試では事前の評定から逃げることができません。
中学受験が試験当日で合否が決まるのに対して、公立高校受験では、試験当日だけでなく一年生から長期戦で受験が続く感じです。
一方、私立入試では事前の評定の割合が異なる入試制度が準備されています。
「私立高校一般入試」は当日の試験のみで合否が決まります。中学受験と同じイメージです。
「私立高校推薦入試」はさらに「併願推薦」と「単願推薦」に分かれます。「併願推薦」は事前の話し合い等で受験が許可され、合否は当日の試験で決まります。「単願推薦」は評定(または摸試の成績)を元にした事前の話し合いで入学が(ほぼ)約束され、試験と面接がよほど悪くない限り合格します
「単願推薦」は生徒確保の面が強く人気がある高校は実施していないので入試といえるか微妙です。そこで「単願推薦」以外の入試制度をまとめると下の図のようになります。
客観のみ短期決戦←-----→主観混じり長期戦
中学受験 私立併願 公立推薦 公立一般
私立一般 私立併願 公立推薦 公立一般
(当日試験のみ) (評定→試験) (評定→試験+評定)
評定は教師の主観が交じるので、教師受けの良い子が有利になるのは当然ですが、それ以外にも学校によって随分差があることにも注意が必要です。
例えば、私はS県S市U区周辺で仕事をすることがありますが、この地域は文教地区として有名で教育熱心で裕福なご家庭も多いせいか、公立中の生徒の学力が高いです。したがって他の地域に比べると通信簿で「5」をとるのが難しくなります。
さらに、同じ地区内で隣接している中学でも基準が随分違うようで、同じような成績でも「5」と「4」に分かれるのを目にします。
「5」と「4」で一回の違いは1点ですが、全科目でこれを3年間で通算するとかなり大きな差(偏差値で5くらいは左右される)になります。
受験態勢の作りやすさ
私立中学に行きたいけれど、「勉強」自体があまり好きでないお子さんは珍しくありません。
そういうお子さんが進学塾に入って友達ができ、友達についていくうちに学習習慣がつき、数年後の受験を成功させることはよくあります。
このように、勉強する子が集まる環境に適応して周囲の勢いに乗れば力を伸ばして受験勉強をのりきれるのが塾の大きな利点で、塾なしで受験するのは簡単ではありません。
さて、中学受験をする生徒は公立小に通っていることが多いでしょう。公立小では勉強は簡単で定期テストも部活動もないので学習面のみならず学校の拘束が非常に少ないです。
この結果、中学受験は「通塾態勢・受験態勢」を作りやすく、その勢いを大いに利用できます。(私立小学校は事情が異なります。)
一方、高校受験の場合、中学校は勉強のレベルも上がり定期テストがあり、さらに部活まであるのであらゆる面で学校の拘束が強いです。
そのため学校の「補習」ではない「進学」塾に通う「受験態勢」を作るのが難しくなります。学校優先・部活優先の周囲の風潮に逆らったり、友達との交友関係を制限しないといけないかもしれません。
将来行きたい高校・大学や学習の心構えを持たないと周囲に流されて受験態勢に入るのが遅れる可能性があるのです。
自分を持ってる子向き←-→周囲に合わせる子向き
高校受験 中学受験
(態勢作り難い) (作り易い)
まとめると上図のようになります。単純に高校受験にすれば何とかなるわけではありません。
記事のまとめ
3つの観点から中学受験と高校受験の違いをまとめてみました。
「ひらめき型」向き←--→「コツコツ型」向き
公立中高一貫 私立高校 中学受験 公立高校
(思考型のみ) (難しめ三科) (算国理社) (易しめ五科)
万人向き←-→「良い子」向き
「勢い」型向き←---→「コツコツ」型向き
中学受験 私立併願 公立推薦 公立一般
私立一般 私立併願 公立推薦 公立一般
客観のみ短期決戦←---→主観混じり長期戦
(当日試験のみ) (評定→試験) (評定→試験+評定)
自分を持ってる子向き←-→周囲に合わせる子向き
高校受験 中学受験
(態勢作り難い) (作り易い)
後編へ
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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