中学受験と高校受験どちらにするか?(後編)

中学受験と高校受験どちらにする?(前)」の続きです。中学受験・高校受験・大学受験を全部経験した東大卒講師歴20年の図解講師「そうちゃ」がお届けします。

中学受験と高校受験の違い(再掲)

前回、3つの観点から中学受験と高校受験の違いをまとめてみました。

❶科目と向くタイプ

「ひらめき型」向き←--→「コツコツ型」向き

公立中高一貫 私立高校 中学受験 公立高校
(思考型のみ) (難しめ三科) (算国理社) (易しめ五科)

❷要素・期間と向くタイプ

万人向き←-→「良い子」向き
「勢い」型向き←---→「コツコツ」型向き
中学受験 私立併願 公立推薦 公立一般
私立一般 私立併願 公立推薦 公立一般
客観のみ短期決戦←---→主観混じり長期戦
(当日試験のみ)  (評定→試験) (評定→試験+評定)

❸受験態勢と向くタイプ

自分を持ってる子向き←-→周囲に合わせる子向き
高校受験    中学受験
(態勢作り難い)   (作り易い)

これを元に、次は大学進学までのコース別に中学受験・高校受験どちらが良いか?を検討してみましょう。

中学受験、3つの目的

中学受験の目的

❶大学までエスカレーター

❷六年後の難関大受験

❸公立中進学を回避

中学受験をする場合、その目的が大きく分けて3つあります。

1つ目は「エスカレーター」で、「大学附属の中学から高校・大学へは内部進学し、受験は一回で済ませる」という目的です。

2つ目は「難関大受験」で「私立の中高一貫校で高度な教育を受けて難関大学に進学する」という目的です。

3つ目は「公立回避」で「地元の中学が荒れている」「共学よりも女子校に行かせたい」「余裕をもって中高時代を過ごさせたい」などの理由で「とにかく私立中学に行かせたい」という目的です。

3つ目の「公立回避」の場合は中学受験か高校受験かで迷うことはないので、はじめの2つ「附属中狙い」と「中高一貫」について、中学受験と高校受験のメリットとデメリットを検討していきましょう。

「大学附属狙い」の場合

この場合、中学受験で大学附属中学を受験するのと、高校受験で同ランクの付属高校を狙うのとどちらが良いか迷うことになります。

科目

科目的に比較すると、こうなります。

❶科目と向くタイプ

「ひらめき型」向き←--→「コツコツ型」向き

公立中高一貫 私立高校 中学受験 公立高校
(思考型のみ)  (難しめ三科) (算国理社) (易しめ五科)

私立高校受験は「ひらめき型」が有利なので、「コツコツ型」のお子さんの場合は中学受験をする方がお得です。

もう少し具体的に書くと、付属を目指すご家庭は「マーチ」レベルというのが一つの基準になっています。

そして中学受験の場合、早慶付属はともかく、マーチ付属レベルなら算国理社で合わせて「合格点」をとるのはそれほど難しくはありません。

一方、大学付属高校受験の場合、英数国の三科目で理社がなく、しかも一番暗記科目の要素が強い英語が難しく得点源にするのが簡単ではないので、コツコツ型の子には非常にキツイです。

(大げさでなく大学付属の英語は難しいです。早慶付属はネイティブ系の語彙が必要で、普通の家庭の子が得点源にするのは相当困難です。マーチ付属はそこまでは難しくありませんが「得点源」にするには英検で準2級に余裕で受かる実力が必要です。)

残りの科目についても書いておくと、国語は中学受験と高校受験でレベルはあまり変わりません。付属は中学受験も高校受験も記号問題中心の傾向があります。

数学は算数と半分くらい内容が変わり、受験算数に比べると数学の方が易しいです。しかし、マーチ以上の付属になると問題が難しくなるので、結局中学受験と高校受験で難易度はさほど変わりません。そうすると理社でカバー出来る分、中学受験の方が合格はしやすくなります。

要素・期間

決定要素と期間を比較すると…

❷要素・期間と向くタイプ

万人向き←-→「良い子」向き
「勢い」型向き←---→「コツコツ」型向き
中学受験 私立併願 公立推薦 公立一般
私立一般 私立併願 公立推薦 公立一般
客観のみ短期決戦←---→主観混じり長期戦
(当日試験のみ)  (評定→試験) (評定→試験+評定)

ここはあまり変わりませんね。私立の受験は中学受験でも高校受援でも当日の試験結果がメインになるからです。

ただ「先生受けが良く」「コツコツ長期間がんばれる」子の場合は評定を使える推薦試験も受験できるのでチャンスは広がります。しかし「マーチ付属」レベルの高校になると「単願推薦(事前に入学を許可されるタイプ)」はほとんどありませんから、やはり当日の試験で決まります。

受験態勢

指導している側から見ると、ここが一番のポイントで、しかも不確定要素です。

❸受験態勢と向くタイプ

自分を持ってる子向き←-→周囲に合わせる子向き
高校受験    中学受験
(態勢作り難い)   (作り易い)

中学受験の場合、四谷大塚や日能研のような進学塾に入って全体の真ん中より上をキープできれば(偏差値55程度)マーチ付属の中学でも合格できる所があります。

コツコツ型の子なら理社をしっかり得点して算数は受験者平均を取れば合格可能性は十分あります。

一方、高校受験では母集団のレベルが下がるので、マーチ付属でも高校受験生のトップクラス(偏差値67以上)にいないと合格は難しいです(早慶付属はトップクラスでなくトップ(偏差値75前後)のみ)。

そしてレベルが下るとはいえ、その集団の中に入ってしまうと不思議なことにトップになるのはやはり大変なのです。従って「地頭が良い」子以外は早めに受験をスタートしないとトップになるのは難しくなります。

ところが高校受験の場合、上で述べたように、よほど目的意識が強くないと中2以前から受験態勢に入るのが難しいです。そして中3から受験態勢に入って実力を大きく伸ばすのは「地頭が良い」子以外は難しいです。

小結論

私立大学附属狙いの場合、中学受験できる環境があるなら中受で入るほうがラクに思えます。

安心して高校受験に切り替えられるのは、「英語の学習が進んでいて」「中1・中2から目的意識をもってコツコツ勉強できる子」くらい…でしょうか?

それ以外のお子さんは、一生に一回のチャンスのつもりで頑張ってみるのが良いと思います。

もし中学受験が駄目でも、真剣に勉強した経験(国語と理社はそのまま役立ちます)を生かせば上位の公立高校を狙うのが十分可能です。そこから指定校推薦などでマーチ以上の私立大学も十分狙えます。

中高一貫狙い(難関大学受験)の場合

次は、中高一貫校からの難関(国立)大学受験を狙っていた場合です。この場合は、中学受験をやめて高校受験で公立と私立どちらを目指すかで変わります。

私立高校受験に切り替える場合

あまりないケースだと思いますが、中学受験をするのと付属でない上位私立高校を受験するのとどちらがよいか?考えます。

検討

要素順に検討していきます。

❶科目と向くタイプ

「ひらめき型」向き←--→「コツコツ型」向き

公立中高一貫 私立高校 中学受験 公立高校
(思考型のみ) (難しめ三科) (算国理社) (易しめ五科)

科目を考えると「ひらめき型」なら高校受験もありです。ただ、英語のレベルが高くないとダメです。

科目に関しては、もう一つ注意することがあります。高校受験で私立を第一志望にすると、どうしても「理社は受験で使わないので程々でいいや」となってしまいます。これがかなり危険です。

大学受験で「私大文系志望」にしたら最後、「理系志望」はもちろん「国立志望」に進路を変更するのもほぼ無理なのと同様で、「理社はいいや」と思ってしまうと定期テストでの理社の成績が下がって評定(内申書)が下がってしまうので、公立高校受験では相当レベルを下げないといけなくなります。

また理社のどちらかが出来ないと大学受験が出来ません。さらに英語や国語の文章読解では人文科学(社会)や自然科学(理科)の知識がないと不利になるので、理社が出来ないというのは後の大学受験にもかなりのマイナスになります。

❷要素・期間と向くタイプ

万人向き←-→「良い子」向き
「勢い」型向き←---→「コツコツ」型向き
中学受験 私立併願 公立推薦 公立一般
私立一般 私立併願 公立推薦 公立一般
客観のみ短期決戦←---→主観混じり長期戦
(当日試験のみ)  (評定→試験) (評定→試験+評定)

ここはあまり変わりませんね。「コツコツ型の「良い子」なら併願をうけるチャンスが広がるくらい

❸受験態勢と向くタイプ

自分を持ってる子向き←-→周囲に合わせる子向き
高校受験    中学受験
(態勢作り難い)   (作り易い)

実は「私立●●高校」に入るという目的意識を(表面的に)持ち続けるのは意外に簡単です。なぜなら上で述べたように「私立高校受験=理社は出来なくても良い」と考えると「私立志望」と言っていれば勉強がラクになるように見えるからです(笑)

実はそんなことはなく、英数国三科目が学校のレベルを遥かに超えるレベルになっていないといけないのですが、学校の定期テストと部活動をこなしながら、この意識を持ち続けるのは厳しい進学塾に入っていない限り非常に難しいでしょう。

小結論

というわけで結論を言うと、中学受験をやめて高校受験で付属でない私立を目指すのはオススメできません(入った後も中入生に追いつくために生徒も学校も苦労します。だから高校募集を停止する難関高校が増えています)。

公立高校受験に切り替え

こちらはよくあるケースだと思います。中学受験するのと地元のトップ公立高校を目指すのはどちらが良いか考えます。

検討

要素順に検討します。

❶科目と向くタイプ

「ひらめき型」向き←--→「コツコツ型」向き

公立中高一貫 私立高校 中学受験 公立高校
(思考型のみ) (難しめ三科) (算国理社) (易しめ五科)

コツコツ型なら相性は良さそう。理社は中学受験の方が難しいくらいなので高校受験では得点源にするのも易しいし、英語も私立のように難しくないので、ちょっと頑張れば得点源にできる。

❷要素・期間と向くタイプ

万人向き←-→「良い子」向き
「勢い」型向き←---→「コツコツ」型向き
中学受験 私立併願 公立推薦 公立一般
私立一般 私立併願 公立推薦 公立一般
客観のみ短期決戦←---→主観混じり長期戦
(当日試験のみ)  (評定→試験) (評定→試験+評定)

ここがかなり変わります。成績だけでなく先生に評価される「良い子」タイプでないと評定が低くなって足を引っ張られます

❸受験態勢と向くタイプ

自分を持ってる子向き←-→周囲に合わせる子向き
高校受験    中学受験
(態勢作り難い)   (作り易い)

ここはいつも同じで、トップ公立高校を目標にコツコツと努力を続けられる子なら高校受験でも大丈夫かもしれません。

小結論

「目標に向かってコツコツ努力できて、先生受けも良い子」(一言でいうと「大人」?)なら高校受験に切り替えても大丈夫でしょうか…

結論:中受から高受に 切り替えても大丈夫なのは…

高受に切替可能な2つのケース
  1. 「英語が超得意」で「コツコツ型の意思の強い」子が私立附属を高校受験する
  2. 「先生受けが良い」「コツコツ型の意思の強い子」が公立高校を受験する

大学附属校を志望している場合は、「英語の学習がかなり進んでいて、目的意識をもってコツコツ勉強できる子」なら私立大付属高校受験を目指してもよいかもしれません。

中高一貫校を志望している場合は、「目標に向かってコツコツ努力できて、先生受けも良い子」(一言でいうと「大人」?)なら公立高校受験に切り替えても大丈夫かもしれません。

結局、目的意識をもってコツコツ学習できる子でないと、高校受験に安易に切り替えるのはオススメできないという結論になりました。

もし受験をやめるなら

そうは言っても、いろいろな理由で「受験はもう無理!不都合があっても、高校受験に切り替える!」というご家庭もあるでしょう。

中学受験をやめることになった場合に気をつけて欲しいこともお話しします!

参考記事「受験をやめる場合の注意は?」を見て下さい。

爽茶そうちゃ
いかがでしたでしょうか…

受験産業に関わる者のポジショントークにはならないように、慎重に構成して書きましたが、結論としては自分の20年の講師経験からくる実感を補強する結果になってしまいました。

「ここがおかしくない?」「それホント?」「そこはアンタの独断でしょ!」等…皆様のご意見をお聞かせ下さい。

最後までお読みいただきありがとうございました。この記事があなたの役に立てたなら嬉しいです。

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